中国旅行 1日目 上海のユースホステル



成田空港発、上海浦東空港ゆきの飛行機は、予定より1時間遅れて15時15分に離陸した。着陸はそのほぼ3時間後、6時10分(中国時間5時10分)だった。

荷物を受け取り、両替をし、市街へと向かう。中国に入国して、さっそくアトラクションが待っている。日本にはまだ開通していないリニアモーターカーが、浦東空港から出ているのである。地下鉄に比べれば高くつくが、40元(1元は現在約19円)払えば、未知の超高速を体験できるのである。

警備員の何人も配置された構内に入ると、白地に細く緑とオレンジの筋の入った車両が待っていた。私の乗った6時17分発のリニアモーターカー(中国語で磁浮)は、龍陽路までの一駅を時速300キロ、7分で突っ走る。(昼間はもっと速く走る。)

夜で視界が効かなかったせいもあるが、正直、時速300キロはそれほどでもなかった。車輪がないからさぞかし静かに走るんだろうと思っていたら、東京の中央線並みには揺れた。空港に帰るとき(そのときは昼間)にも乗って、もう一度超高速を味わってみよう。

リニアモーターカーを降りた龍陽路から、予約していたユースホステルに行くのには、ここから確か6駅の南京東路という駅まで行けばいい。しかしリニアモーターカーを降りてふと考えてみれば、自分は中国の鉄道の乗り方なんて知らなかった。切符の買い方や、切符の形式、改札の通り方も知らない。以前旅行したタイでは、移動はすべてタクシーと徒歩で済ましたから、海外の電車は初めてだった。

それでも、自分の乗るべき路線が「2号線」という名前だと知るまでに少し立ち往生くらいで、問題無く目的の駅までたどり着けた。

しかし最寄り駅からユースホステルまでが、大変だった。

ネットはつながらないので、ある情報はネットの予約画面のキャプチャ画像に記された住所のみ。見知らぬ外国の街で、Tianjin Road(天津路)のNo. 258という情報だけを頼りに建物を探すのは、簡単ではなかった。ところどころの建物に番号がふってあったおかげで(500番くらいまであった)、258番の「南京青年宿舎」にたどり着くことができた。

結局、天津路を端から端まで一往復くらいして、かなり無駄足を踏んだが、見つけてみると宿は駅からほど近く、大通り(それが南京東路である)から1本外れただけの大変アクセスのよい場所だとわかった。浅草の大通りから1本外れた場所で格安で泊まれる感じだ。

チェックインしてから、真っ先にユースホステルのwifiにアクセスした。とりあえず自分の置かれた状況を把握したかった。

日本を経つ前の夜に、中国のネット検閲をすり抜けるサービスには申し込んである。
中国の検閲は、Facebook、Google、TwitterをはじめとするSNSにはアクセス出来ない。YoutubeやBloggerも、Google関連のサービスだからアクセスできないと聞いていた。けれども、しかるべきサービスを利用すれば、それらにアクセスすることができる。

と思って、そのサービスを経由してFacebookにアクセスしようと思ったら、信じられないことにエラーという表示が出た。何度やっても同じメッセージが出る。何ということだ。このサービスも中国当局に規制されてしまったのだろうか。

もういい。時刻は8時を回っていた。まずは腹を満たすのが先だ、と思い、外に繰り出して軽食(小吃 シャオチー)を探しにいった。ユースホステルを出て30秒もあるけば、軽食屋が何件も並んでいた。ここはやはり立地がいい。

2年前のタイのときもそうだったが、一人で海外の食堂に入るのは僕は苦手だ。何度も同じ道を通って、迷った挙句、1個3.5元の月餅を買った。それを買った店が、「真老大房」というかなり名のある店なようで、宿でbaidu.comを調べたときにみつけていた。そこは見たところ、食堂というよりも、土産物屋といった体だ。僕は朝昼のご飯に加え、機内食(でないと思っていた…)のために、腰を据えて食べるほどには腹が減っていなかったのもあって、月餅を4個買った。
「给我4个」

4個下さい、と店先のオバちゃんに声をかけたら、開口一番「どこから来たのか」と聞かれた。冗談で「韓国だ」とでも言ってもよかったが、こっちの「4個下さい」が通じたのと、向こうの「どこから来たのか」が理解できたのがうれしくて、つい正直に、日本だと答えた。そしたら、オバちゃんが何か言う。さすがにそれはよく理解できなかったが、推測するに、「お前はずいぶん薄着だな」と言ったのだと思う。

それは自分でもわかっている。上海の今日の天気は、というか上海の天気そのものが、東京とそっくりである。もう春めく頃だけれども、日も暮れているし、コートやダウンを来ている人が大半なのは東京と変わらない。そんななか、僕はパーカーでほっつき歩いていたのだから、オバちゃんが薄着だと思うのはもっともなことなのであった。でもこっちとしては、ちょっと涼しいくらいだから別にダウンを着るほどでもないと思っていたのだ。

ともあれ、月餅4個を買うこの数十秒のやりとりが、中国での、僕の始めての会話らしい会話だった。

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