中国旅行 3日目 博物館と蟹

宿から南西に20分あまり歩くと、鼎という古代青銅器をかたどった巨大な円形の建物が現れる。上海博物館である。

午前に上海博物館に行ってきた。ここは、るるぶに「中後屈指の博物館」とあるとおり、たしかに大きな博物館で、書道関係では、古代青銅器と、歴代の書法、印章が多く展示されている。しかも入場は無料なのである。かの有名な巨大青銅器、「大克鼎」は、ここ上海博物館にある。

青銅器の出土した中国とあって、1階の青銅器の質と量は圧倒的だった。私の知る限り、日本のどの美術館、博物館でもこの数は見られない。

3階には書法と印章(はんこ)がある。書法は質、量ともに少し物足りなかったが、印章はかなりの数があった。印影はもちろんのこと、書物ではなかなか見られないハンコの現物があった。昔のハンコはどういう形をしていて、どのくらいの大きさなのかは、実物を見なければわからない。2000年前のハンコは、いま一般的な四角柱や円柱ではなくて、もっと背が低くてツマミ(鈕 ちゅう)がついている。そして、意外と小さい。

この後同じ部屋の日本人のひとと昼食の約束をしていたので、さっさと博物館を後にしたが、西安から帰ってきたときにもう1度来ようと思う。ここは1回、しかも1時間そこそこで見切れるところではない。

今日まで安い大衆的なものしか食べていないので、一度本格的に上海らしいものを食べたいと思った。上海の高級料理といったら、上海蟹である。

調べると、上海蟹はそれだけで5、6000円(200〜300元)は覚悟しなければいけないようだ。それに、蟹単品で頼むことは普通ないから、副菜なりドリンクなりいつくか頼むと、もっと高くつく。僕らが行ったのは、宿から10分もしないところの、王宝和上海餐厅というところで、やけに高級なホテルの2階にあるレストランだ。

どのくらい高級なレストランかというと、メニューがiPadで出て来るくらい高級だ。店のおねえさんたちが日本並みに笑顔でおもてなししてくれるくらい高級なのだ。中国のコンビニをはじめ、少しくらいいい店でも、店員にはおもてなしのかけらもないと思って間違いない。笑顔はないし、お金やレシートのあつかいは適当だ。まあ、最初の何回こそ日本とのちがいに少し驚くが、すぐに特に気にならなくなる。

話が少しそれたが、僕らは、一般的な上海蟹(360元)を一つだけと、あと他のメニューを3つ頼んだ。メインの蟹は、蟹のほぐし身に、絶妙で上品な味付けをしてあり、絶品だった。ほかに頼んだイカの煮付け、湯葉のキノコ詰め、野菜(ホウレンソウみたいな見た目でモロヘイヤみたいな香りの青物)の炒め物も、美味だった。

西安行きの鉄道は22時に出るので、空いた午後は地下鉄に乗って文化名人街というところに行った。ここは書画、骨董、古本の店が並んでいるそうだ。昨日書いたように中国の古本市場は小さいので、古書店の存在は貴重だ。

行ってみると(駅からすごく迷った…)、そこは百数十メートルの短い通りだった。多いのは壺などの高そうな骨董品で、古本は小さい露天のセールと、内山書店という(日本の同名の書店と関係があるのだろうか)小さい店があるのみで、書法関係のものにめぼしいものはなかった。

迷ったせいで歩き疲れたときにうれししかったのは、文化名人街からの帰り道、きのう福州路で見つけたのと全く同じ形態の新古書店を偶然見つけたのだ。新刊本で売れ残ったのを安く買い取って売っている店だ。ここの書法関連の本は福州路のものと似ていて(つまりそこそこ良いということだ)、きのうは見つけなかった本を3冊買った。どれも重く、宿まで抱えて持って帰った。

書くのが遅くなってしまったが、書道に関する本で特に最近出たものは、日本より中国の方が質も量もずっと良いのだ。日本では見ないような種類の本が、入門から玄人向けまで揃っている。だからこの旅行の主な目的は、本をあさることなのだ。

いまは夜の7時を回ったところ。今日は夜行列車でネットはつながらないと思うので、続きは明日の記事で。

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