言語学の冬:斎藤純男『言語学入門』
年末年始は、言語学で。2冊目。 斎藤純男(2010)『 言語学入門 』三省堂 2冊目も入門書であり、言語学の諸分野がなるべく広く扱われている。章立ては、 1 音声学と音韻論 2 形態論 3 統語論 4 文章・談話研究 5 意味論 6 語用論 7 歴史言語学 8 比較言語学 9 言語地理学 10 社会言語学 11 文字論 12 言語学史 前回 の『はじめて学ぶ言語学』と比べると、文字論や言語学史など珍しい分野が扱われているほか、いわゆる言語学っぽい言語学が目立つ。前回のは脳科学や考古学や教育なども関わった、学際的で比較的新しい言語学が多かったのに対し、本書は歴史言語学や比較言語学など、伝統的な(ただし現在主流というわけではない)分野に重点が置かれていると言い換えてもよい。 本書の第一印象。網羅的かつ大変簡潔。章立てで見れば本書の方が少ないが、前回のは執筆者が面白い研究やトピックを紹介するというのだったのに対し、今回は用語や現象の羅列といった体である。例えば、前回ので1章(15ページ)が割かれていた連濁は、本書ではたった1行(66ページ)と、胸のすくような簡潔さである。説明はそぎ落とせるだけそぎ落とし、数を詰め込もうという姿勢だ。本書はその点で真の意味で非常に広く、非常に浅い。羅列とか浅いとか言うと聞こえが悪いが、つまりすこぶり平易と言うことであり飲みごたえよく、著者は一人であるため難易度も安定している。例も日英語にとどまらず、豊富で興味の深いものばかりで噛みごたえもよい。 一応入門者でない私にとっても、本書は発見の塊であった。初学者には是非おすすめ。高校生なら容易だろう。