投稿

11月, 2011の投稿を表示しています

御岳渓谷、鳩ノ巣渓谷:この山奥も一応東京

イメージ
ICUは大学には珍しい3学期制で、実は11月の第3週(18日)をもって秋学期(2学期)は終わりました。今は3学期制の産物としての10日ほどの 秋休み を楽しんでいます。実は今日で終わりなんですけど。 この休みを使って、友人はディズニーランドに行ったり、高知に旅行に行ったりと、出かける人が多いので、私も便乗して、5日前(25日(金))にひとり紅葉見物に行ってきました。 色々迷いましたが、お金と時間をあまり使いたくなかったので、ともに青梅線沿いの、御岳渓谷と鳩ノ巣渓谷(東京の西の西)に行きました。2か所です。贅沢でしょ。 本当は 日原(にっぱら)鍾乳洞 という関東では有名な鍾乳洞にも行きたかったのですが、バスまで使って東京の奥の奥まで行くのは面倒だったので、この2か所の紅葉で妥協しました。 9時前に家を出、ほぼ2時間後に御嶽駅に到着。平日のせいか、青梅駅あたりからご年配の方しかいず、大学生らしき人は激レアでした。渓谷は駅から徒歩数十秒。渓谷を歩き始めてすぐ気付きましたが、紅葉がかなり少ないです。まだ色付いていないのではなく、そもそも紅葉する木が無いのです。「Yahoo!紅葉特集」にだまされました。私の写真はいいところだけ撮っているので、多いように見えますけど。 昼食は駅の向かいの東峯園というところのカツカレーでした。(私が作った方がおいしいと思いm) 13:20頃、御岳からさらに3駅分東京の奥、鳩ノ巣駅に降りました。御岳渓谷はそれでも観光地で、おじさんおばさんがたくさんいたのに、鳩ノ巣渓谷になると人が激減し、駅では私以外に1人しか降りませんでした。そういえば、御岳も鳩ノ巣もかなりの山奥で田舎なので、Suicaが使えるだろうかと不安になりました。 駅から徒歩数分で、渓谷の入り口です。御岳より山奥とあって、そこよりかなり谷が険しいです。ですがその分、雄大な景色が広がっていました。高い崖、巨大な岩、青く渦巻く清流。そこはまさしく秘境でした。人もほとんどおらず、ゆっくりと荘厳な渓谷の風景を楽しむことができました。ここも紅葉は多くなかったので、楽しんだといっても、私は主に岩を楽しんだんですけどね。岩好きには、ここは穴場だと思います。 14:48、鳩ノ巣駅を発ち、また2時間以上かけて家の立ち並ぶ平野に戻って来ました。紅葉が少なかったのが、残念でした。

法隆寺を建てた飛鳥の技:西岡常一「木に学べ」

イメージ
いい読書だった。 高校か中学の国語の授業で1節だけ読んだことがあって、木と宮大工と古代の建築技法とに魅せられたのを思い出して、先日ICU図書館で見つけ出して読んだのは、 木に学べ―法隆寺・薬師寺の美 (小学館文庫) [文庫] / 西岡 常一 (著); 小学館 (刊) です。 本書では、法隆寺の棟梁であり、薬師寺の棟梁も務めた 西岡常一 (つねかず)氏が、木や道具や法隆寺や薬師寺や宮大工について語ります。ベストセラーにもなったそうです(Amazonの 商品の説明のページ より)。 本書を読んで私が思えらく、西岡氏はここ50年で最高の宮大工ではないでしょうか。彼は飛鳥時代の工法を受け継ぎ、木の癖を見抜くプロであり、そして昭和前半の法隆寺の解体、修復に携わった最後の宮大工でした。 それにしても、飛鳥時代の工法の成熟度には目を見張ります。信じられないくらいです。道具も鉄も釘も木の知識も建築物の力学も、今よりずっと洗練されていて、効率がいいのに、今ではほとんど忘れられています。何種類もの鑿(のみ)、絶対に抜けない和釘、1000年以上持つヒノキ材などなど、1300年も前に大工たちはこれらを知っていたのですから、本当に驚くばかりです。 宮大工は、後継者不足というよりも、伝統工法を受け継がせるのが難しいというのが問題のようです。現在は古代建築の再建などはほとんど無く、宮大工が育たないのです。 将来消えてしまうかもしれない古代の工法や建築の妙の一端を、よくぞ本にまとめてくれた。また西岡氏個人の記録としても、よくぞ残してくれた。読みながら、何度も何度も、そう強く思いました。 本書の良さは、実際に読んでみないと分かりません。数ある類書の中でも、これは真っ先に読むべきバイブルではないでしょうか。

梶井基次郎「檸檬」「城のある町にて」ほか

イメージ
梶井基次郎の文章は美しい、彼のルックスと文章の美しさとのギャップが大きい(梶井基次郎カワイソス)、という風の噂を聞いて、彼の小説の中から「檸檬」、「城のある町にて」、「路上」、「冬の日」を読んでみました。 檸檬 (新潮文庫) [文庫] / 梶井 基次郎 (著); 新潮社 (刊) 思ったほど文章が美しいとは感じられませんでしたが、彼独自の小説を感じることができました。梶井基次郎の作品の特徴は、自身の体験を基に、主人公の境遇の記述は最低限に抑えて、その心の動きを描こうとしたことだと言えるでしょうか。こういうのは私小説と言われるそうですね。特に彼が患っていた肺結核の苦しみを描いたものが多く、作品に鬱々とした雰囲気が感じられました。 自身の体験の再構成という彼の作風ゆえ、小説というよりも、個人的に書かれた、まとまりのない日常の記述というふうに見えなくもない部分が時たまありました。そういう点から見ても、有名な「檸檬」は私に一番なじみやすい作品でした。

「自然界にひそむ「5」の謎」は未解決である

イメージ
がっかりした。このがっかりを表すには、いつものようなですます調ではだめだ。 先日読んだ本は、4、5年探していたものだ。 自然界にひそむ「5」の謎 (ちくまプリマーブックス) [単行本] / 西山 豊 (著); 筑摩書房 (刊) 著者が本書を書いたのは、シンプルかつ魅力的な疑問からである。すなわち「 正5角形を作図するのは難しいのに、ヒトデのごとき下等生物がなぜきれいな5角形を作っているのか 。」(分度器で72度ずつ測るのは禁止だ。 数学における「作図」 とは、目盛りのない定規とコンパスのみを用いて図形を描くことをいう。)そう、確かに不思議である。5角形の作図が難しいだけでなく、5は数学的に不安定である。他の数字はというと、1はすべての単位であり、2は対称形を作ったり直線を定めたりし、3は平面を定め、正3、4、6角形は平面を充填する。特に1、2、4、6は、自然界にもいくらでも見つけられる。(頭や口は1個、目や羽や触角は2個、犬の足は4本、昆虫の足は6本、蜂の巣穴は6角形。)このように5は自然に存在しにくい数なのに、なぜかヒトデは5本の腕を持ち、多くの花弁は5枚である。その謎を解くことは、とても意義があるはずだ。 実は本書の3分の1か半分は、中学生のときに読んでいた。本書のテーマに当時から興味をひかれていたが、続きを読もうとしたら、どういうわけかいつの間にか中学校の図書館から無くなっていた。高校生のときにこの本の存在を思い出して、近所の図書館を探してみたが、見つけられなかった。東京に引っ越してきて、ようやく近くの図書館で見つけた次第である。先ほど4、5年探していたと書いたのは、こういうわけだ。 数年越しに出会えた、良書だと思っていたのだが……。 がっかりした。 こじつけもいい加減にしてほしい 。論理の飛躍も甚だしい。 本書は「ヒトデはなぜ5本腕か」と「花びらはなぜ5枚か」の2部に分かれているので、まず前者から見てみよう。突っ込みどころはたくさんあるが、逐一書いていく時間も気力もないので、決定的なところだけを例に挙げよう。 著者は、ヒトデの5本腕は、その発生初期の32細胞期の割球の配置と、 準正32面体(または切頂20面体) という、サッカーボールでおなじみの正5角形と正6角形でできた立体で説明できるのではないかと(何の根拠も無く)仮定した。著者によれば、準正32面体にお

一世を風靡した年表:松岡正剛「情報の歴史」

イメージ
13日の記事 で紹介した本に、情報デザインの成功例として言及されていた、 情報の歴史―象形文字から人工知能まで (Books in form (Special)) [大型本] / 編集工学研究所 (著); 松岡 正剛 (監修); NTT出版 (刊) という大著です。 本書は、洞窟壁画からインターネット拡大に至る歴史を、情報の記録という観点から編集した400ページを超す壮大な年表です。初版発行は1990年(増補版は1996年)ですが、出版の直後は、情報史ブームが起きるほどの評判だったそうです。 本書には、これまでの年表の常識を覆す画期的なデザインが、2つ取り入れられています。まず、 日本史と世界史の区別が無い こと。古代には東西の分類があるものの、11世紀以降は地域による区分を全く無くし、見開きごとに設定された5つのテーマに従って項目が並べられています。もう1つは、 ページのここかしこに付いた、縦横、大小、カラフルな見出し です。膨大な情報にあふれ返る本書も、色分けされた見出しを見ることで時代の大筋を捉えることができます。 その上、情報史以外の一般歴史事項もたくさん掲載されていて、どの時代も均等に重視しています。例えば、私も少しは知っている書道関連で見てみると、「書聖」 王羲之(おうぎし) は4世紀の東アジアの列に載っているのはもちろん(しかも大見出しで)、私は好きだけど一般には認知度が皆無の 「石門頌」 という作品までも、ちゃっかり2世紀の中国の列に載っていました。高校世界史で習ったことでここに載っていないものは無いのではないかと、私は踏んでいます。 本書は読むための本ではありませんが、歴史好きの人や、わが子に歴史を好きになってほしい親御さんには、ぜひ手に取ってもらいたい大作です。

情報デザインの新書:ウェブのデザインが大半を決める

イメージ
これからの製品はデザインやで。 ――松下幸之助、欧米視察後の発言 私は、デザインが好きです。デザインにもいろいろありますが、デザインと聞いておそらく一般的にイメージされるであろうグラフィックデザイン、それと、ウェブデザインにとても関心があります。もっとも、私には知識も技術も無いので、好きといっても、大抵はきれいなデザインを見るのが好きといった程度です。そんな私の乏しい知識から好きなグラフィックデザイナーを挙げるとすれば、有名どころになりますが 佐藤可士和 です。ウェブデザインについても、ページのデザインが洗練されていて、使いやすさを最重視したものは見ていて(使っていて)心地いいですが、大量の情報を羅列したり、ごちゃごちゃに配置したり、色の使い方が下手だったりするページは、見る気がしなくなります。 先日読んだ本は、そうした情報のデザインを論じた新書です。本書の発行が、インターネットが日本でも社会に浸透してきた2001年だというのにも、興味を惹かれました。当時の(ウェブ)デザインがどうで、今とどう違うのかを知りたかったからです。(私は、黎明期のコンピューターやインターネットにも実は興味があります。) 情報デザイン入門―インターネット時代の表現術 (平凡社新書) [新書] / 渡辺 保史 (著); 平凡社 (刊) さて、本書に星をあげるとすれば、4つと半分って感じです。最初のうちは内容が濃密で、新たな発見がいっぱいで、こりゃスゲーと思っていたのですが、後半は内容が薄くなってきて、(私にとって)面白くなくなってきました。最後の2章は、デザインと人間の関係の概念的な論評や、地域社会規模でのメディア活用についての話が多くなってくるので、そういったことが好きな方には楽しいのですが、私の関心事ではありませんでした。なので星5つはあげることはできません。 情報デザインとは、 大量の個々の情報を、分かりやすく編集(配列、階層化、視覚化など)すること です。職業別電話帳を例にとると、個々の会社名やらの項目をでたらめに羅列しただけでは、目当ての情報にたどり着けないというより、もはやそれは使い手の便宜を無視しており、電話帳として意味をなしていません。ですからそれらは先ず「書店」、「結婚式」、「自転車」などのカテゴリーに分類され、カテゴリーの中で会社名(店舗名)により50音順(アルファ

グーグルアースで手軽に地形を見てみないか

イメージ
地形関連の記事が、最近続いています。今回はICU図書館で借りてきた本を読みました。 Google Earthでみる地球の歴史 (岩波科学ライブラリー) [単行本] / 後藤 和久 (著); 岩波書店 (刊) 本書は、実はここに記事として載せるか迷ったくらい、私にとっては退屈でした。というのも、大半の写真が特に珍しいわけでもないありきたりな地形(有名な火山とか珊瑚礁とか、地すべり跡とか)で、それに、画像が粗かったり、遠景過ぎたりといったものが少なくなかったからです。もっとも、本書はGoogle Earthで手軽に地球の歴史を見ることが主眼なのですから、私のニーズに合わないのは当然ではあります。 しかし、もちろん、非常に美しく、自然の壮大さを感じさせる画像もありました。下に、それらを備忘録としてリストしておきたいと思います。誰でも簡単に本書の画像にアクセスできるというのが、Google Earthの利点です。 Google Maps にアクセスして、画像をGoogle Earthに切り替えて、下の緯度と経度で検索すれば地形を見ることができます。 スイス、ラウターブルンネンのU字谷(46 35 40 N, 7 54 28 E) ロシア北部、ヤマル半島の湖沼群(69 22 22 N, 71 35 50 E) グランドキャニオン遠景(36 03 28 N, 112 04 57 W) 褶曲により形成された東シエラマドレ山脈(25 37 31 N, 100 34 33 W) アマゾン川源流の蛇行と三日月湖(4 10 16 S, 70 32 41 W) エバーグレーズ国立公園の湿地(25 22 20 N, 81 07 01 W) グリーンランド、イスアの氷河湖(65 04 15 N, 50 09 22 W)