中国旅行 8日目 大雁塔と城壁

今日は西安滞在の最終日。

毎日の主な移動手段は徒歩である。西安の地下鉄はまだ2本しか走っていないが、バスがかなり発達している。バスは一律1元(たまに2元)で乗ることができる。ただしバスが発達し過ぎていて路線が複雑すぎ、その上大抵ラッシュ時並みに満杯になる。(バスも、慣れれば簡単なのだが。)他にもタクシーやレンタサイクルがあるが、難易度が高そうで使わなかった。

いつも、食事などを見つけるために無駄足を踏んでいるので、2万歩をゆうに超える日が多い。徒歩で毎日疲れる。

そのため、だんだん新しい場所に訪れるのが億劫になっていった。今日も長距離を歩かなければならないと思うと、宿でゆっくりしていたくなる。そもそも僕の西安での目的、つまり八仙庵骨董市と書院門と碑林博物館は果たしてしまったので、士気が失せてしまったのだと思う。

とはいえ、西安周辺には、兵馬俑、楊貴妃墓、華山などなどなどなど、ガイドブックが言うにはざっと100は見所があるらしい。西安に来たら◯◯は行かなければ、というような、義務感で旅をするのはあまり好きでないけども、せっかくの西安滞在を棒に振るのはあまりにもったいない。

郊外まで足を伸ばす時間は流石になかったので、アクセスしやすい大雁塔を訪れた。宿の最寄り駅から地下鉄で南に3駅いき、そこからしばらく歩く。

大雁塔は、唐代に造営された寺院で、現在は有名な7層の塔を中心に広大な敷地を持つ。この大雁塔という名前、書道をやっている人ならピンとくると思う。そう、楷書の名品、褚遂良の「雁塔聖教序」があるのが、このお寺なのである。

しかしこの「雁塔聖教序」、かなり探したのだが見つからなかった。ガイドブックには「塔の南側に立っている」としかないし、大雁塔の敷地内にも案内板がない。敷地内の土産物店で拓本は見つけたので、石碑があるのは確かだと思うのだが…。

ポカポカな好天の日に長距離を歩いた上、目的の8割がたであった石碑を見つけることができなかったので、どっと疲れが来た。地下鉄駅まで歩く気力がなかったので、帰りはバスを使った。バスには昨日、中国人の友達と1回乗っていたので、乗り方は知っていた。

帰って、書院門で最後の買い物をした後(拓本2枚と筆3本)、今日のもう一つの目的である城壁(城墙)に登った。

西安市街を囲む城壁は、高さ、厚さともに10m以上、周囲は13kmという巨大な建造物である。入場料を払えば、壁の上に登ることができる。

僕が登ったのが、6時過ぎで、日が没しようとする時刻だった。城壁の南門(永寧門)から登って東に向かって歩いたが、振り返ると、オレンジ色の丸く大きい太陽が見えた。

太陽の丸みが肉眼で見えるということは、自分と太陽の間に、光を弱める何かがあるということだ。何を隠そう、大気汚染によるスモッグである。

西安の大気汚染を、こういうかたちで実感するのは風情も何もあったものではないが、それでも、古城の影の間から日没間際の太陽を臨むのは、人をどこか感傷的にするものがあった。城壁から碑林博物館の方を見下ろすと、僕が2度焼き芋を買った屋台の老爺が、人のまばらになって来た通りで今日も客を待っている。この次、いつ西安に来るのかはわからない。

西安というところは、上海に輪をかけて、男女構わず路上に平気でゴミを捨て、平気でタンを吐き、クルマの警笛は容赦無く鳴らす、まったく迷惑な街だった。でも、ここにはまた来たいと思う。

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