法隆寺を建てた飛鳥の技:西岡常一「木に学べ」

いい読書だった。

高校か中学の国語の授業で1節だけ読んだことがあって、木と宮大工と古代の建築技法とに魅せられたのを思い出して、先日ICU図書館で見つけ出して読んだのは、木に学べ―法隆寺・薬師寺の美 (小学館文庫) [文庫] / 西岡 常一 (著); 小学館 (刊)です。


本書では、法隆寺の棟梁であり、薬師寺の棟梁も務めた西岡常一(つねかず)氏が、木や道具や法隆寺や薬師寺や宮大工について語ります。ベストセラーにもなったそうです(Amazonの商品の説明のページより)。

本書を読んで私が思えらく、西岡氏はここ50年で最高の宮大工ではないでしょうか。彼は飛鳥時代の工法を受け継ぎ、木の癖を見抜くプロであり、そして昭和前半の法隆寺の解体、修復に携わった最後の宮大工でした。

それにしても、飛鳥時代の工法の成熟度には目を見張ります。信じられないくらいです。道具も鉄も釘も木の知識も建築物の力学も、今よりずっと洗練されていて、効率がいいのに、今ではほとんど忘れられています。何種類もの鑿(のみ)、絶対に抜けない和釘、1000年以上持つヒノキ材などなど、1300年も前に大工たちはこれらを知っていたのですから、本当に驚くばかりです。

宮大工は、後継者不足というよりも、伝統工法を受け継がせるのが難しいというのが問題のようです。現在は古代建築の再建などはほとんど無く、宮大工が育たないのです。
将来消えてしまうかもしれない古代の工法や建築の妙の一端を、よくぞ本にまとめてくれた。また西岡氏個人の記録としても、よくぞ残してくれた。読みながら、何度も何度も、そう強く思いました。

本書の良さは、実際に読んでみないと分かりません。数ある類書の中でも、これは真っ先に読むべきバイブルではないでしょうか。

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