2012年8月19日日曜日

チベット初の盲学校を建てる!:「わが道はチベットに通ず」

ICUの私の先輩に石田由香理さんという方がいる。今年4月から1年間大学を休学し、フィリピンでボランティアをした後、今はフィリピン大学の聴講生として視覚障害者に関する様々な活動をしている。フィリピンでは、視覚障害者はよっぽどお金がない限りまともな教育が受けられず、差別も根強い。こうした不平等になんとか突破口を開くべく、石田さんは現地の障害者団体の会議に出席したり、現地や日本の厚いバックアップに後押しされて点字やブラインドテニスの普及を計画したりと、まさに「1留学生が国を動かすことも可能なんじゃないか?」(6月22日の記事より)という勢いなのである。(石田さんのブログ:「フィリピン留学記」

しかし、今でこそ事は(石田さんの手に負えなくなる勢いで)進んでいるが、この数か月は歓びばかりではなかった。

口ばかりでちっとも約束を守らない気質がちなフィリピン人に、石田さんは様々な場面で業を煮やしたり、電機屋では、マウスの機能をオフにしているだけだといくら説明しても、マウスが故障しているからこのコンピュータには対応できないと店員に突っぱねられたり(自らも全盲の石田さんはマウスを使う必要がない)、せっかくの日本人友達との旅行では、ホテルの従業員らにまんまと騙されたりと、歯を食いしばるような思いもしている。

先日読んだ「心の視力」で触れられていた、このドイツ人女性による記録が、石田さんの活動と多かれ少なかれ重なったのは、私がフィリピンでの不平等と彼女の体験を日頃読んでいたからなのだ。

Sabriye Tenberken. (2000). Mein Weg führt nach Tibet. Die blinden Kinder von Lhasa.
Sabriye Tenberken. My Path Leads to Tibet.
サブリエ テンバーケン(平井吉夫訳)(2001)『わが道はチベットに通ず―盲目のドイツ人女子学生とラサの子供たち』 風雲舎

わが道はチベットに通ず―盲目のドイツ人女子学生とラサの子供たち [単行本] / サブリエ テンバーケン (著); Sabriye Tenberken (原著); 平井 吉夫 (翻訳); 風雲舎 (刊)

当時26歳の学生だったその女性、サブリエ・テンバーケンは、チベット語の点字を開発し、チベット初の盲学校を設立しようと決心する。

チベットでは盲人はたいてい人間以下の扱いを受け、知能も劣っていると信じられてきた。しかし彼女は1996年のスタートから数年かけ、この状況を変えた。

ここまで至る道は艱難辛苦としか言いようがなかった。宗教、文化、偏見、不十分なインフラ、猛烈な官僚主義に圧倒され、テンバーケンらは何度も絶望を味わった。

これは素晴らしいサクセスストーリーだ。だが少し冷静になれば、テンバーケン自身も何度も言われていたように、これは無謀な挑戦だった。必要な教育もない素人の盲目のドイツ人学生が、単身、異郷チベットで、計画も資金もスポンサーもなしに、盲学校を設立しようとするなど、何とも崇高な志である。このプロジェクトがいつ潰れて、誰にも知られずに終わっていてもおかしくなかった。

しかし、現実として、テンバーケンは成功した。彼女とその素晴らしい協力者たちは、盲学校の子どもに自信を与え、自立させた。チベットでの盲人への理解が深まることを祈る。

チベット盲人施設(ドイツ語)
Braille Without Borders(英語)

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