仮名の2つ目の段が全く使われぬ、ペレックの「煙滅」

文学とはホント、ご無沙汰だった。前読んだのは…8か月前!? よっぽどのことがなければ読もうとは思わんからね。さてさて、この本は相当へんてこだぞ!

Georges Perec. La Disparition. 1969.
Georges Perec, Gilbert Adair (translator). A Void. 1994.
ジョルジュ ペレック(塩塚秀一郎訳)(2010)『煙滅』水声社


たねを明かすと、このノベルの原典はフランス語なのだが、なんとこの本、(ペレックの名前は除くと)アルファベットのeが全く使われず書かれてるんだよ! eはフランス語で最も使われるのだそうで、je(僕)もle(the)も、de(of)もet(アンド、それと)も、あれもそれもどれもこれも書けぬとか。まったく、よく書けたものだね。邦訳では、これもすごくて、仮名の2つ目の段が全く使われず書かれてるのだ。翻訳担当の方もさぞ手こずったことだろうね! 彼の腕前へも感服。

オーサーのペレックは、レーモン・クノーらのまとめる文学工房のメンバーなのだが、その工房は、様々言葉を操って、新たな、変わった文学を発見することをゴールとした。昨年の5月、クノーの文なんとかなるへんてこノベルを読んだ節(せつ)、このペレックの本へも出会って、目をつけたのだった。

プロットはなかなかよかった。ただ冒頭は、僕のセンスが悪くて、よく分からなくて、これノベルの役目を果たすのだろうか、読むのやめようかな、と思ったことも無くはなかった。が、峠を越えると、だんだんと謎が解けるところはハラハラだった上、ユーモアもあったので、満足だ。

おっと、前言改め。「なかなか」なんてとんでもなかった。僕はこの本を全く解ってなかった! 先だって翻訳の方が跋文でこの本を解くのを読んだのだが、ペレックが十重二十重(とえはたえ)と巡らせた、数々の驚くほど手の込んだたねや工作に、全然感付かなかった。全くだめ。僕はこの本のうわべを眺めただけだったのだ。やっぱこれは3度も4度も読んで、謎を探るのがおあつらえなんだと悟った。

ともあれ、全く、変なことを考えたもんだね!

ううむ、手ずからやるとなると、結構難物だな。

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