アルビン・トフラーの大著『第三の波』をやっと読み終えた

I finished reading The Third Wave by Alvin Toffler (originally published in 1980). It’s so long that it took more than a month to read it. I learned a lot.

読み終わった。やっと読み終わった…。

アルビン・トフラー(1980年)『第三の波』日本放送出版協会

著名な未来学者アルビン・トフラーによる600ページ超の大作を読むのに、1か月以上もかかってしまった。

著者によれば、「第一の波」は、約1万年前の、人類が農業を開始し定住生活を始めた農業革命のことを指す。「第二の波」は300年前の産業革命のことを指す。そして、1960年代アメリカを発端として(おそらく2012年の今も)その勢力を伸ばしているというのが、本書のテーマ「第三の波」である。

産業中心主義の第二の波は終わりに近づいており、第三の波が押し寄せている。第三の波は、第二の波と正反対のベクトルを持っており、様々な軋轢を引き起こしている。逆に言えば、無関係に見える現代の諸問題は、第三の波という背景のもとで全て説明がつくのだ。本書は、これまでの第一、第二の波の文明を振り返るとともに、未来に来たるべき第三の波の、いささかポジティブな「総合的考察を試みた書物(9ページ)」である。

私はこういう社会学系はめったに読まない。本書を読んでいて、高1の夏休みに読まされた、見田宗介の『現代社会の理論』とかなり似ていると思ったが、現代社会系は本当にそれだけだ。ではなぜこんな分厚い本書を手に取り、読了するに至ったのか。私が本書を知ったのは、去年の11月に読んだ『情報デザイン入門』で、「生産=消費者(prosumer)」という言葉に出会ったときだ。(その時の記事はこちら。)これはトフラーの造語で、第三の波の文明においては、その生産=消費者が出現するだろうと予測した彼の分析に心惹かれたのである。(この語の意味やそれが出てきた文脈は、話が長くなるので省略します。)それに、政治に恥ずかしいほど疎い身として、社会の過去、現在、未来の趨勢を少しでも知ったほうがいいという動機もはたらいたのだろう。

多くのことを学んだ。産業革命は技術体系、情報体系、政治体系、精神体系に何をもたらしたのか、そして今、第三の波はそれらをどう組み換えつつあるのかを。本書で、社会の構造を考える、一つの枠組みを得た。

原書は30年以上前、1980年に出版されたが、その後一部実現されたこともあれば、まだ実現されていないものもある。当たっていることもあれば、実現が疑わしい机上の空論もある。(当時はソ連も東西ドイツも現役だ。本書のここかしこに資本主義と社会主義の二項対立があったのは興味深かった。)

本書はともかく文明全体の動向を統合的に概観しているため、紙面の都合上「単純化、一般化、それに要約(12ページ)」、さらに抽象化は避けられなかった。(「未来学」と聞いて想像しがちな、例えば空飛ぶ車云々といった、具体的に過ぎる技術革新予言は基本的に皆無。)だが、抽象化がやや行き過ぎているところもまま見られた。例えば「世界中の政治体制が危機に瀕している」と言われても、つかみどころの無い話で、具体的な話も十分に無いまま解決策を示されても、いまいち説得力に欠ける。統合的考察は重要である一方、この点では難しい。

もう一点言いたい。第三の波の記述が長すぎである。600ページのうち、2/3以上が費やされていた。この冗長な記述は、ひとえに、同じ事の繰り返しのせいだ。もう一度繰り返そう。同じことが何度も繰り返されていた。これは、終わりに近づくにつれあからさまだった。簡潔な記述を心がけて欲しかった。

なにはともあれ、勉強になった。本書は、私がこれまで読んだ本の最長記録だと思う。

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