2014年3月2日日曜日

「ルルルルル・・・」の「巻き舌」はそんなに舌を巻いていない

舌をふるわせて出す「ルルルルル・・・」という音があるだろう。

私は小学生のとき、友達がやっているのを見て、スゲーと思ってずっと練習していた記憶がある。できるようになるまでに、何日もかかったと思う。大学1年のときタイ語をかじったときには、この音をいい気になって連発していたから、おかげで今は自由に出せる。まあそんなことはどうでもよろしい。

この音は言語学的には「歯茎顫動音」や「歯茎ふるえ音」と言われていて、日本語話者には難しい音だ。日本語にはこの音を使う場面がないからだ。変な音に思えるかもしれないが、この音をれっきとした言語音として使う言語は少なくない。例としてスペイン語やイタリア語やアラビア語などが挙げられる。例えばスペイン語のperro(犬)の「rr」はふるえ音だ。音声はこちらの「alveolar trill /r/」で聞ける。

ご存知のように、この音は一般には「巻き舌」と呼ばれている。

ここで本題:でもこの音、本当に舌を巻いているのか?

このいわゆる「巻き舌」は、実は舌を巻いていないという指摘が21世紀の初頭になされ(Momose 2014: 933)、「巻き舌呼称問題」として、すでに幾十の論文が発表されている。(うそである。)

でも本当に、「巻き舌」は舌を巻いていない。もちろん、「巻く」というのは舌を後ろに反らせるということだろう。しかし、そんなに反らせていない。確かめてみよう。ルルルルル・・・。

歯茎ふるえ音
画像:ローザンヌ大学 Online Phonetics Course Alveolar trill

このルルルの巻き舌ではなく、実はもっと巻いている音が他にある。中国語に。

中国語では「捲舌音」と言われていて、ピンインでは<r>、IPAでは/ɻ/と書かれる音がそれだ。その名の通り、舌の先を思い切り後ろに反らせて、上顎に接近させて声を出してみよう。ちょっとくぐもったrといった感じの音が、中国語の捲舌音だ。ちなみに専門的には、「反り舌近接音」という。音声はこちらの「retroflex approximant /ɻ/」。


反り舌近接音の画像がなかったので、それにきわめて近い「反り舌摩擦音」
画像:ローザンヌ大学 Online Phonetics Course Voiceless / voiced retroflex fricative

これがほんとうの意味での巻き舌なのではないか、というのが私の密かな思いだ。

ネットで検索しても、そう主張している人はあまりなさそうだし、Wikipediaには、ルルルの巻き舌と中国語の捲舌音をまれに混同するとまで書いてある。捲舌音が本当の巻き舌じゃないのかな。

ルルル=「巻き舌」は、名が実を表していないけれども、ならわしとしてその呼び名ですっかり定着している。だが私は、歴史のどこかで誰かが名づけ間違えた、もしくは、捲舌音か何かと取り違えたのではないか、と信じ続けることにしよう。

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