英語や日本語やモホーク語を作る「レシピ」とは

ボリュームたっぷりでした。もうおなかいっぱい。

やっと読み終わった、言語のレシピ―多様性にひそむ普遍性をもとめて [単行本] / マーク・C. ベイカー (著); 郡司 隆男 (翻訳); 岩波書店 (刊)は、学術書の中でもかなり中身が詰まっていて、決して易しくなかったので、時間はたっぷりあったのに読了に10日近くかかりました。



本書は、パラメータという、現代の言語学の非常に有力な理論についての一般向けの入門書です。その理論は、簡潔に言うと、多様な化合物が100余りの元素から成り立っているように、多様な言語は有限個のパラメータという「スイッチ」の設定によって成り立っているというものです。

パラメータ理論で、言語に関するいろいろな説明が簡潔になります。例えば子供は、白紙の状態から言語を学ぶという非効率的なやり方をしているのではなくて、生来備わっているパラメータの値を設定していくことにより効率よく学んでいるのだと考えることができます。また、英語には常に主語がなければなりませんが、イタリア語やスペイン語は場合により主語が省略可です。このとき、空主語パラメータというものが想定され、英語ではそれがオフに、イタリア語やスペイン語ではオンになっていると考えるのです。

著者は、このパラメータ理論を押し進め、英語と日本語、英語とモホーク語(北米の先住民族の言語)という、あまりにかけ離れた言語も、パラメータのレベルではそれぞれたった1つの値しか違わないと結論付けます。見た目が全く違っているのに、たった1個のパラメータでその違いが説明できるというのです。

著者は、パラメータが全てを説明するという考え一筋なので、彼を信じるかどうかは読者次第ですが、私は、パラメータというものはどうやらありそうだと思いますし、彼の理論も一応筋は通っていそうだと感じています。

後半に行くにつれて難しくなっていったので、読むのが大変で、理解せずに読み進めてしまったところもありましたが、なかなか興味深かったです。

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