2014年1月10日金曜日

アメリカの方言分布が一目でわかる動画

唐突だが、日本で「標準的」な(アメリカ)英語を習っていると、仕方のないことだけれども、アメリカでは唯一それしか話されていないと思ってしまいがちだ。つまり方言というものに目を向けるひまがない。だから、実際にはアメリカ一国でも様々な方言があり、さらにはその標準英語なるものを話している人がいるのかさえも実はあやしいということが、少し意外に思えるかもしれない。私も、ようやく大学2年のときに西海岸と東海岸とで発音に違いがあると知って、驚いた記憶がある。

外国人の習う日本語が、東京あたりで話される日本語をもとに「規範化された」文法であるように、教育のために作られた学校文法(Teaching Grammar)は、必ずある程度の理想化がなされているものなのだ。そこに方言の入り込む余地はない。

しかし、日本でさえ方言の違いは小さくない。面積にしてその何十倍も大きいアメリカに、方言がないわけがない。さらに、アメリカは移民の国である。歴史、社会的な事情とあいまって、人種による言語差も無視できない。

別に、「生きた英語を学ぼう」とか、「そんな受験英語、ネイティブは使いませんヨ」とかいう大義名分で、方言も勉強しよう、などと言うわけではない。それは物理的に大変だし、学校文法にもそれなりの利点がある。(イギリス英語とアメリカ英語の違い(特に綴り)くらいは少し知っておいたほうがいいかもしれないけど。)

けれども、僕にとって、英語の方言の存在に気付いたのは、結構な発見だった。やはり、方言があることに気づくこと自体、ちょっとした知的興奮ではなかろうか。生徒にとって、それは杓子定規な英語教育の外の、違った世界に眼を開く瞬間だと思っている。僕は大学に入って、何度もそういう経験をさせられた。

要するに、(1)アメリカには様々な方言がある。(2)方言は楽しい。それだけを知っていただきたくてこの記事を書いている。

少し理屈っぽくなってしまったが、ここ最近、3本立て続けに、アメリカの方言の分布に関する良質なビジュアライゼーションを見つけたのだ。1つは、Business Insiderによる地図集。1つはThe New York Timesによる方言診断、そしてもう1つは、下に紹介するThe Atlanticによる動画である。2つまではよい。しかし、優れたエントリーがこう3つ集まると、まとめてしまいたくなるのである。3つ足でようやく椅子が立つように。(ただし、どれも同一の研究を基にしていることが分かったので、すべてを詳しく紹介するのは割愛する。)

この3つの中でも、このThe Atlanticの手がけた動画が特に強力なのだ。まずはご覧ください。


例を挙げると、日本でもカタツムリに対して、マイマイ、デンデンムシなどの方言があるように、アメリカでもダンゴムシはroly polyだったりpill bugだったりdoodle bugだったりする(1:25~)。

もうひとつ、you(複数形)をどう言うかという問題は面白い。各地で、you guys、y'all(<you all)、yous(e)など多岐にわたる(2:56~)。英語は歴史変化の結果、2人称代名詞の単複の区別が消えてしまった。つまり「あなた」はyouだし、「あなたたち」もyouなのだ。「わたし」はIで、「わたしたち」はweなのに。だからこれら方言変種は、再び複数形を復活させようという動きの結果だという見方ができる。yousなどは、単数形youに複数形接辞-sをつけたもので、単純明快である。

短い時期に、このように酷似したエントリーを見つけたので、なんだいまアメリカでは方言が流行っているのかな、と思ったが、どうやら、ケンブリッジ大のBert Vaux教授の研究を、Joshua Katzという大学院生(兼NYTのインターン生)がヒートマップに美しく作り変えたものが、大当たりしたらしい(Atlanticのこちらの記事などを参照)。

ちなみに、これらの資料が良質だと言うのは、学術的に正しいとか画期的だとかを言っているのではもちろんない。学術的事実に基づきながらも、そのデータの表現方法が巧いのである。(方言は地図上に表せるというアドバンテージがある。)ビジュアライゼーションの厳密さに絶対な保証はできないかもしれないが、ツカミはバッチシなのである。

単にキレイなだけじゃない。学校での教材にもってこいだろう。高校の英語の授業はじめ、大学の英語学や社会言語学、地理言語学などで、導入に最適だ。先生方、いかがでしょう。

生徒側としても、高校で下ばっか向いて受験勉強したり、大学で下手な講義を聞いたりするよりは、この動画でもひとつ見てみたほうがよっぽど触発されるんじゃないか。(英語のリーディングやリスニングの勉強にもなるかもね。)

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