デザイナー廣村正彰の科学する文字、「字本」
デザインに惹かれた。
廣村正彰(2009)『字本―A Book of Letters and Characters』ADP
![字本―A Book of Letters and Characters [ペーパーバック] / 廣村正彰 (著); ADP (刊) 字本―A Book of Letters and Characters [ペーパーバック] / 廣村正彰 (著); ADP (刊)](https://lh3.googleusercontent.com/blogger_img_proxy/AEn0k_uhB7Kr1PmRRZT_jMApcBVE542ht9poUAa7_mH59zGQ7gE3gUoKBXWFFoU_18QNW6W8j5lpg4MzPkLNlBqr-U9QLqqBE4W61LsXd2jJVd_rrKSjEwhCIyKkt9TFpWbRxjQ=s0-d)
本書は文字の本である。ただし難しいことは一切書かれていないし、文字数もかなり少ない。文字とは何か? 文字と脳、眼、手、耳との関係は? 文字の美とは? 本書は、文字のいかなるものか、いかにして認知されるかを、自然科学の知見に基づいて、しかし科学の堅苦しさを感じさせないような平易な言葉を使って書かれた本である。
本書は、白を基調にしたシンプルでクールなデザインで、見開きにテーマひとつと、テーマに沿った美しいビジュアル1枚という思わず目を引くデザインだ。それもそのはず、著者は心理学者でも文字学者でも言語学者でもなく、デザイナーなのだ。文字を学問としてではなく、タイポグラフィーの対象として見てきた人物である。著者廣村氏の文字に対する探究心が、本書へと結晶したのだ。
そう、だから廣村氏は、本書を書くにあたって必要な諸学問には、おそらく明るくなかったはずだ。だが、彼はその道の門外漢の地位に甘んじて、なまじっかな内容に終わらせるようなことはしなかった。感服すべきは、参考文献の多さである。なんと、たった1ページ、数百文字のために、平均十数個、最多で80程度もの参考文献があるのである。それも、私でも知っているような、錚々たる面々である。下手な科学書よりよっぽど多い。廣村氏の本書に対する執念を見た。
本書の最後の、古今東西あらゆる文字を網羅した系統樹も美しかった。
と、ここまでべた褒めだが、必ずしも楽しく読めたわけではない。専門用語が全く使われていないため、あまり厳密な記述だったわけではないし、言語学などに明るくない人には誤解さえ与えてしまう恐れもある。これが言語学のすべてではないと、ここにコメントしておきたい。そもそも、いわゆる言語学は文字を扱う学問ではない。その理由は少々長くなるので、過去の記事に譲る。
本書は、日本語と英語の対訳に近い形をとっているのだが、英語がいかにも日本人が書いた感じがして、いくぶん残念だった。ほぼすべて読み飛ばせて頂いたが、すでに1か所、関係代名詞の誤用を見つけてしまった。奥付を見ると、翻訳は著者とは別の方だが、ネイティブのチェックがあったかどうか疑わしい。
廣村正彰(2009)『字本―A Book of Letters and Characters』ADP
本書は文字の本である。ただし難しいことは一切書かれていないし、文字数もかなり少ない。文字とは何か? 文字と脳、眼、手、耳との関係は? 文字の美とは? 本書は、文字のいかなるものか、いかにして認知されるかを、自然科学の知見に基づいて、しかし科学の堅苦しさを感じさせないような平易な言葉を使って書かれた本である。
本書は、白を基調にしたシンプルでクールなデザインで、見開きにテーマひとつと、テーマに沿った美しいビジュアル1枚という思わず目を引くデザインだ。それもそのはず、著者は心理学者でも文字学者でも言語学者でもなく、デザイナーなのだ。文字を学問としてではなく、タイポグラフィーの対象として見てきた人物である。著者廣村氏の文字に対する探究心が、本書へと結晶したのだ。
そう、だから廣村氏は、本書を書くにあたって必要な諸学問には、おそらく明るくなかったはずだ。だが、彼はその道の門外漢の地位に甘んじて、なまじっかな内容に終わらせるようなことはしなかった。感服すべきは、参考文献の多さである。なんと、たった1ページ、数百文字のために、平均十数個、最多で80程度もの参考文献があるのである。それも、私でも知っているような、錚々たる面々である。下手な科学書よりよっぽど多い。廣村氏の本書に対する執念を見た。
本書の最後の、古今東西あらゆる文字を網羅した系統樹も美しかった。
と、ここまでべた褒めだが、必ずしも楽しく読めたわけではない。専門用語が全く使われていないため、あまり厳密な記述だったわけではないし、言語学などに明るくない人には誤解さえ与えてしまう恐れもある。これが言語学のすべてではないと、ここにコメントしておきたい。そもそも、いわゆる言語学は文字を扱う学問ではない。その理由は少々長くなるので、過去の記事に譲る。
本書は、日本語と英語の対訳に近い形をとっているのだが、英語がいかにも日本人が書いた感じがして、いくぶん残念だった。ほぼすべて読み飛ばせて頂いたが、すでに1か所、関係代名詞の誤用を見つけてしまった。奥付を見ると、翻訳は著者とは別の方だが、ネイティブのチェックがあったかどうか疑わしい。
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