2016年4月15日金曜日

Chiang Yeeによる書道入門書「Chinese Calligraphy」

以前書いたが、英語で書かれた書道関連の本には、これといってオススメできるような良書が少ない。そんなのニーズなんてありませんがなという思いはさておき、英語の書道本は、以下の条件を多く満たしているほど良い本と言えるだろう。

1)内容が「浅く広い」こと
2)著者が書の研究者であること
3)こなれた英語で書かれていること
4)図版が豊富であること
5)廉価で手に入れやすいこと

以前紹介した中田勇次郎氏の本は、上の条件のうち1、2、3、4を満たしていた。しかし内容が高度で、入手が難しいという欠点があった。(しかもでかい。)

今回紹介するChiang Yee(蒋彝)氏の「Chinese Calligraphy」は、条件1、2、4、5を満たしている。



初版は1938年だが、私が手に入れたのは1973年の第3版、第13刷である。版数と刷数の多さから、この本が評価を得ているのが分かる。ペーパーバックだから、気軽に取り出して読めるのもいい。

まず条件1について。本書は、書の基本である「書体」、「技法」、「筆画」などにそれぞれ1章が設けられており、東洋の書を知らない欧米人に寄り添って書かれている。

条件2について。蒋彝氏は書の研究者ではなかったと思うが、中国で生まれ育った書家であり、書の知識と実践についてはネイティブである。

条件4について。多くの古典作品を含む図版と図解が豊富である。発刊が古いというのもあってか、白黒であり、図版については決して質が良いとはいえないけれども、入門書としては十分な質量である。

条件5について。本書は洋書だから店頭には置いていないだろうが、まだ絶版にはなっていないようで、アマゾンで簡単に買える。

総じて言うと、本書はもし海外の友達に「書道のことが知りたいんだけど何かいい本ない?」と言われた場合に、まず薦めたい1冊である。

さて、本書に一つ注文をつけるとすれば、文章のこなれ具合であろうか。

本書は中国語版の英訳でなく、著者自身が英語で書いた本である。蒋彝氏はイギリスの大学で教鞭をとったらしいから、英語はかなりうまいんだけれども、それでもやはりアラがあるような気がする。英語が間違っているというわけではないんだけど、いかにも「英語を勉強しました」という感じが彼の文章のあちらこちらから匂ってくる。自然でない、大学の先生らしいきまじめなスタイルの文章である。

あと、中国人らしい、過剰とも言える抽象的、詩的表現が多い。例えば以下のような表現。

A horizontal line or Heng (横) 一, so written as to seem like a formation of cloud stretching from a thousand miles away and abruptly terminating.(112頁) 
(水平画あるいは「横」。数千里かなたにたなびく片雲がにわかに消滅するように書する。)

こう抽象的、主観的なことを書かれてしまうと、読む側にとっては少々困ってしまう。もっと具体的、客観的な解説が欲しいものである。

こうしたクセのある文章ゆえ、文章はやや読みにくい。